あだち充さんの「みゆき」が全巻読めるので読んだ
作品には何の罪もないし、disるつもりは全くないと前置きした上で書きます。
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昭和50年代(1980年17号 - 1984年18号)の作品である「みゆき」を読み返してみたら、2020年の感覚では10代女性への描写や成人男性からの扱われ方にものすごく違和感を覚えた。という話。
知らない人のために少し書くと、いわゆるラブコメの漫画で、他の有名なあだち充作品とは違い、スポーツがテーマということはなく、ラブコメだけで終始している。
ウィキペディアによれば、この作品はテレビアニメ化、テレビドラマ化、映画化されている。第28回(昭和57年度)小学館漫画賞受賞も受賞している。
https://ja.wikipedia.org/…/%E3%81%BF%E3%82%86%E3%81%8D_(%E6…
つまり客観的には、多くの人に受け入れられ、好意的な評価が多い作品と言える。
しかし、だ。
今の自分の感覚、とりわけジェンダーギャップについて考える機会が多くなってきている昨今では、「気持ち悪っ!」と思えてしまったところがこの漫画にはいくつもあった。
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主人公の男の子は高校一年生。とても聡明なガールフレンドがいる。名前はみゆき。
主人公はいろんな事情で一軒家に一人で暮らしており、そこに血のつながっていない一つ年下の妹(名前はみゆき)と同居することになる。妹自身が「血がつながっていない」と知っているかどうかは主人公にも読者にもわからないが、知らないという前提で話は進んでいく。
つまり、近親恋愛についても常に考える形になっている。
単行本でも垣間見えるが、途中原稿を落とすなどして、作者が連載に熱心ではなくなっている時期があるようにも見える。1年くらいの違いで代表作と言われる「タッチ」の連載が週刊で始まっているので、それも要因かもしれない。
作品で違和感を覚えるのは:
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下着、水着、いわゆるパンチラのシーンの多さ。
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兄の前で扇情的な姿勢やポーズをするが、兄だからという理由でそれを正当化するシーンの多さ。
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男性の過度な要求に対しても、受け入れる妹
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中学校教員による中学生女子へのあからさまな恋愛感情。おしりを触るなどのセクハラ行為。あろうことか女子中学生の高校進学に合わせて、彼は高校の教員になる。
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ヒロインの父であり、主人公の妹につきまとい、パンティを拾ったり隠したり盗んだりする警察官。
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主人公より学力がありながら、主人公と一緒にいたいという理由で同じ大学を目指すヒロイン。
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留年した主人公に合わせて自身も留年するヒロイン。
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妹が結婚するという事になって、妹を奪われたくないという感情が大きくなり、結婚式から奪う主人公。
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妹の結婚相手だった男性と今後何か起こりそうな予感をさせる最終回のヒロイン。
などである。
キスやセックスなどの直接的な描写は全くない。
連載当時、断片的に読んでいたが、ラストがどうなるかなどは知らなかった。つまり私は熱心な読者ではなかった。
しかしながら記憶しているシーンもあったし、セリフもあった。
なにより、当時読んでいた時には、いま改めて読んでみたときの違和感は全く感じなかった。
自分は、その常識で育って来たのだなということは忘れないようにしたい。