Racco

ウィキペディアのこととか。

第2回wikipediaブンガク in 神奈川近代文学館

イベント趣旨と流れ

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イベントの情景やら雰囲気は、たぶん田子さんが書いてくれると思うので、実務的なことを。

イベントページはここ

参加締切 第2回wikipediaブンガク in 神奈川近代文学館



参加者は23?24人?
このイベントの主催は学校司書の田子さん。個人が主催のイベントでこの人数は驚異的では。
内訳は、大学教員の方、司書の方、もうちょっとえらい図書館の方、出版の方、一般の方、Code for のかた、そしてウィキペディアン。
図書館関係者、それも学校図書館の方が多め。

田子さんに事前に、だいたいの参加者のクラスタを伺っていて、ウィキペディアの編集経験もうかがってイメージ。

このイベントのテーマは
ウィキペディア寺山修司関連の項目を充実させよう」。
主催者の田子さんのテーマには「神奈川近代文学館を応援しよう」もある。


神奈川近代文学館では、2018-09-29から11-25まで寺山修司の展覧会
特別展「寺山修司展 ひとりぼっちのあなたに」
が開かれている。

イベントのざっくりした流れは、

館の紹介、海獺によるイベントの説明、学芸員さんによる展覧会の説明。

展覧会観覧、館内で各自食事、午後の部スタート→編集→成果発表。

 

 

事前準備など


私は現状の寺山修司関連のウィキペディアでの状況を調べ、イベントで編集するにふさわしいテーマを選んで、田子さんに送る、というようなことを何度か。

通常、ウィキペディアタウンなどの、ウィキペディア編集イベントでは、編集対象をいくつか決める。

その数はグループ数に比例する感じで、1グループが3~6人くらいが適当か。つまり20人なら、4グループを作り、4つくらいの編集対象を用意して、割り振る。

ただし、グループの中で編集経験の差があると、メリットもデメリットも生じる。
イベント当日の中で、うまいこと編集経験者がフォローしてくれる時もあれば、初心者が気圧されたり、面食らったり、自分がやっていることが何かわからないまま結果だけが出たり。

参加者誰もが楽しく充実した時間を、頭に汗をかきながら過ごしてもらうにはどうしたらいいかということで、私はゆるーく提案。

  • 俺は好きにやるぜ
  • 記事を新規作成するよ
  • セクションを新規作成するよ
  • 既存の記事の内容が薄いから加筆するよ
  • 既存の記事の記述に出典をつけるよ

つまり、今日は何をやってもいいよ。やりたいことをやっていいんだよという提案


その上で、編集対象を提示。

まず、寺山修司作品で記事がないもの。新規作成対象。

  • さらば箱舟
  • 毛皮のマリー
  • 田中未知
  • 忘れた領分
  • はだしの恋唄
  • われに五月を

 

次に寺山修司の記事の中の加筆対象。セクションを新設したり、まとめたり。

  • 展覧会、賞、建造物
  • ボクシング
  • 人物像
  • 評価

そして、寺山修司関連の記事の加筆対象。

最後に、既存の寺山修司関連の記事の中で、出典がついていない箇所を私が52か所あらかじめピックアップして、編集初心者の方がウィキペディアの記法と成り立ちを、出典をつける作業で学んでみるコースも用意。

  • ♣9 朝日新聞に詩『懐かしのわが家』を発表。
  • ♣10 パリで「天井桟敷」最後の海外公演を行い、『奴婢訓』を上演。
  • ♣J  肝硬変を発症し阿佐ヶ谷の河北総合病院に入院。その後腹膜炎を併発し、5月4日に敗血症のため死去。
  • ♣Q 葬儀委員長は谷川俊太郎


などなど。

 

参加者はリストから、出典をつけたい、あるいは出典をつけるための資料がありそうな課題を選ぶか、トランプを引いてランダムに課題を決定するかで、取り組む。

ベテランウィキペディアンで執筆したい人は、私が想定した課題から選んで編集してもいいし、寺山修司関連ならば自由に編集してもOK。

ここまで私の説明が10分くらい。
近代文学館に関する説明が10分くらい。
学芸員さんによる展覧会の説明が20分くらい。
予定よりもだいぶ早く予定が進む。
イベントは前倒しにできるときはしたほうが安心。

展覧会を鑑賞し、寺山修司ワールドを堪能し、イメージを膨らませたあと、
私はざっくりとグループを3つに分ける。
編集経験で、ベテラン、中級、初心者。
「私は初心者でーす」の中から、「さあ、こっちにくるんだ」と二人を引っ張り、私が個人的に「この記事がないのはまずいだろ」と思っていた「毛皮のマリー」を四人グループで新規作成してくださいとお願いした。

参加したウィキペディアンのうち、Nさんはじぶんが書きたいところを書く。Tさんは「田中未知」(晩年の寺山の公私ともにのパートナーで、マネージャー。存命人物)を書くと決めたよう。

ウィキペディアンAさんは技術的な部分で、アカウント作成フォロー、撮影など、体調が万全でない中頑張ってくれた。

Dさんは長旅の疲れも見せず、困っている参加者をやさしくフォロー。

Sさんは、ちょっと遅れて参加。ご自身の大学の図書館で資料を借りてからの参加。報酬のプリンだっ!

TさんとEさんはマイペースにいろいろ気づいたところを淡々と。いつも仲良し。

残り10人ほどが初心者コースで、午後いちにとても基本的な編集のやり方や方針をこのグループだけにレクチャー。10分くらい? 
最低限の説明と配布資料だけで、出典をつけましょう!がスタート。
それぞれ、文献発見が困難な課題、既存の文章自体が怪しい課題、簡単な課題を前にして、進捗も様々ですが、早めに終わった人は文章の加筆にも進む。Dさんによる助言のおかげで「みんな絶対にどんどん書けるから、出典付けるだけの作業はもったいない!」ということで、どんどんやりたいことを自由に選ぶながれに。

反省点がひとつ。難しい課題を選んでしまったら、パスしてもよいのだ、他のを選んでもよいのだ、とアナウンスするのをちゃんと伝えきれておらず、なかなか進まない方も。


イベントの成果

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 意識してもらったこと

大事なのは楽しむこと。出来上がりは二の次。プロセスを楽しんで。

ずっと質疑応答タイム。疑問はその場で解消。

図書館関係者が編集初心者の大半を占めることから「ご自身の環境でこういったウィキペディア編集イベントをする場合はどういうやり方があるか。どういう成果が得られるかをイメージ」しながら取り組んで。

重要なのは地の文を書く、出典を添える。今日できることを優先。お体裁は後からでもできるし、妖精さんがやってくれる。

閲覧者のために書く。出典に迷ったら、答えはそこにある。情報を提示することで読者の助けになるのは?

意識したこと

編集に入る前には・・・
百科事典とは何か、
ウィキペディアの歴史、理念、規模、運営などはほとんど説明せず。
海獺って何者?についてもほとんど説明せず。実績も。
ウィキペディアタウンなどのこれまでの成果、歴史、
オープンアクセス、データ、ソフトウェアなどの説明なし。
ライセンスの話もなし。

最低限の編集方針と記法、版が重なっていくこと、自分では削除ができないことだけを説明し、まずは編集に取り組んでもらう。

編集後、今日やったことはどういうことなのか、なんの役に立つのか、どう生かしていけるのか、どんな広がりがあるのか、何を意識したのか、何を学んだのかを、海獺なりに言語化して、振り返りの時間に、ひとつひとつ再認識してもらう。
(先日、豊田館長に褒められたスライドをまた使ってみた)

ここ数年、ウィキペディアの編集イベントに携わってみて、編集の面白さ、編集やウィキペディア対する理解、などなどそれなりに伝えてこれたとは思うが、参加者の参加目的にアジャストできるように、イメージしやすいように、意識してもらいながら進めていくほうが良いのではないかと思うに至り、とにかく先に編集ってものを体験してもらって、それはどういうことなのかという風に順番を逆にしたほうが、ジブンゴトとして意識ができやすいのではないかと思っている。


クルマの運転をしてみたい人は、最初に内燃機関の原理を聞きたいわけではないのだ。