初心者のためのクイーン楽曲ガイド
YouTubeのクイーンのオフィシャルチャンネルでは、なんとクイーンのほとんどすべての楽曲が聞けます。https://www.youtube.com/user/queenofficial
なので映画『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラやベスト盤を聴いてみたけど、もうちょい沼に浸かりたい方向けに、このあたりを聴いてみて、よかったらアルバム単位で聴いてみてくださいのガイド的なものを書くことにしました。
クイーンは1978年の『Jazz』まで、レコーディングするときはアルバムを作り、シングルは出来上がったアルバムから選ぶというやりかたを守ってきました。
つまりある意味で、アルバムという姿を通して聴くのが、クイーン自身が聴いてもらいたいスタイルであると言えます。
ですから、ベスト盤に飽き足らず、よりもっとクイーン堀り下げたいという方は、せめて『Jazz』まではアルバムを通して聴いていただきたいなと。
1980年の『The Game』以降は、シングル先行になったことと、シンセサイザーの導入により、楽器のプレイについては70年代ほど冒険をしなくなったような気もするので、絶対にアルバム単位で聴いてねというお勧めはしません。
『The Game』までのアルバム順と主な曲はこんな感じ
1973 Queen 「KeepYourself Alive」
1974 Queen Ⅱ 「The Seven Seas Of Rhye」
1974 Sheer Heart Attack 「Killer Queen」
1975 A Night At The Opera 「Bohemian Rhapsody」
1976 A Day At The Races「Somebody To Love」
1977 News Of The World 「We Are the Champions」
1978 Jazz 「Don't Stop Me Now」
1980 The Game 「Another One Bites The Dust」
年代順に古いアルバムから聞いていただくのがいいのですが、それはそれとして、 今回は「こんな曲があるよ」という感じで進めます。
では、はじまりはじまり。
【ブライアンのギターに興味を持った方は】
「プロセッション」 Queen Ⅱ
ジョン・ディーコンが作ったアンプ「Deacy Amp」によるギターの多重奏がアルバムのオープニングを飾ります。
「グッド・カンパニー」A Night At The Opera
この曲では、クラリネット、トロンボーン、トランペットなどのディキシーランド・ジャズをギターで再現しています。
「タイ・ユア・マザー・ダウン」A Day At The Races
無限音階とよばれる、音程はどんどん上がっていくのに、まるでだまし絵の階段のように昇り詰めることなく続くイントロ。
などはいかがでしょうか?
それまでは、ブライアンのようにギターの音を幾重にも重ねて録音して、オーケストラのような効果を得たり、色んな楽器を模したりを突き詰めた人はいませんでした。
エレクトリック・ギターの歴史からいけば革命的な試みで、ジミ・ヘンドリックス、エディ・ヴァン・ヘイレン、マーク・ノップラー、などのギタリストのように、ギターの可能性を拡げたギタリストと言えると思います。
ブライアンの使っているギターは手作りのものであるというのも有名です。
初期のアルバムには「シンセサイザーは使っていません」とわざわざ表記されていました。
【ジョンのベースに興味を持った方は】
ベーシストとしてのジョンは、派手なプレイはあまりないという印象や評価が多いようですけれども、ルートをダダダダダダと弾き続けるようなシンプルなプレイは驚くほど少ないです。
「ジェラシー」Jazz
www.youtube.comいわゆるロックのベーシストのアプローチとしては、とても珍しいベースラインです。
「ミスファイア」Sheer Heart Attack
www.youtube.comこちらはジョン自身の作曲によるものですが(アコースティック・ギターのほとんどもジョン)、この曲にベースをつけろと言われても、なかなか思いつかないラインです。
曲の骨格は「ブレイク・フリー」に近いところもありつつ、両極のベースラインのアプローチで全く違う曲調に聞こえるというわけです。
「ゲット・ダウン・メイク・ラブ」News Of The World
「アンダー・プレッシャー」はベースのリフが印象的な曲です。この曲も同様に、フレディのピアノの左手に合わせつつも、ベースが独立しているような雰囲気を醸し出し、曲を彩る細かい動きがちりばめられています。
【ロジャーに興味を持った方は】
70年代のロジャーの楽曲は、ロジャー自身がギターやベースをプレイしているものがあります。
「さまよい」A Day At The Races
ロジャーには「Radio Ga Ga」や「カインド・オブ・マジック」「輝ける日々」などの評価が非常に高い楽曲がありますが、個人的にはロジャーが歌った曲の中ではこれが一番素晴らしいと思っています。
「フリック・オブ・ザ・リスト」Sheer Heart Attack
テンポとしては速いと言えるほどではないのに、ロジャーのドラムのアプローチでサビ部分やギターソロ部分からはものすごい疾走感を感じます。
「シーサイド・ランデブー」A Night At The Opera
クリームのジンジャー・ベイカーみたいなドラマーとしてブライアンの前に姿を現したドラマー、ロジャー・テイラーが、フレディによる様々な曲調の楽曲にどのようにドラムアレンジをしていったのかは興味がつきません。
0:58からの不思議な音は、フレディとロジャーがマイクに口を押し当てて出している音で、まあるい優しい感じの音がフレディ、金管楽器を真似ているのがロジャーです。
【フレディの歌に興味を持った方は】
「谷間のゆり」Sheer Heart Attack
「ネヴァーモア」Queen Ⅱ
「ドゥーイング・オール・ライト」Queen
これら3曲はいずれもファルセットの美しさが際立つ曲で、後期の力強い声とはまた違った、繊細で嫋やかな歌唱が印象的です。
【バンドとしてすごい】
すごいにはいろいろあると思いますが、この3曲を挙げます。
「デス・オン・トゥー・レッグス」A Night At The Opera
ピアノによるロックソングでこんな風にエッジを残しながら且つエレガントに聞こえてしまうという不思議な曲です。ブライアンは、フレディの作ってきた曲にギターを載せていくのはいつだってチャレンジだというようなことを言っていました。
「ザ・ミリオネア・ワルツ」A Day At The Races
www.youtube.comこの曲こそが「豪華で華麗なクイーンの集大成」ではないでしょうか。楽曲に対する深い理解がなければ、メンバーひとりひとりのプレイに昇華されなかったと思います。
「ボヘミアン・ラプソディ」の衝撃があるのでこの曲は埋もれがちですが、ポップからも逸脱しかけている危うさもあり、非常に完成度が高いように思います。
「フェアリー・フェラーの神業」Queen Ⅱ
挙げた3曲はいずれもフレディの作曲ですが、フレディのイメージする世界を超えたレベルでメンバーのプレイが光っています。
ただし、この曲は複雑なコーラスワークも含め、錯綜するアレンジの緻密さは、インスパイア元の同名の絵画と同じく、フレディの偏執狂的ともいえる細部まで神経が行き届いた仕上がりになっています。
Richard Dadd
The Fairy Feller’s Master-Stroke
1855–64