Racco

ウィキペディアのこととか。

松戸市立図書館でのウィキペディア研修

先日、松戸市立図書館の研修にお邪魔しました。

 

前半にウィキペディアとは何ぞやというお話を1時間。

後半にウィキペディア日本語版にある松戸市立図書館近辺の既存記事で、出典がついていないところに出典をつけていただくというワークショップを2時間行いました。

 

皆さん呑み込みが早く手際が良く、熱心に取り組んでくださり、たくさんの出典をつけてくださいました。

 

時間に制約があるときや、まずは体験していただくときにこういう形式のイベントをやるのですが、今回は困ったことがひとつ発生したので、その共有です。


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 海獺の準備:松戸市立図書館近辺の記事をいろいろ見まくって、出典がついてないなーという文章を抜き出して、リストにする。ご担当のMさんに送る。

対象に選んだ記事は、松戸宿、松戸神社、松戸市、矢切、戸定邸の5つ。

 

Mさん:図書館資料から出典が記載されている文献を探し、当日に用意しておく。

 

これがイベントの約20日前のやりとり。

 

参加者は図書館の職員の方ばかりなので、資料を事前に用意せずとも、それぞれ自力で図書館の中から資料を探し当ててしまえるのですが、時間の制約もあるので今回はあらかじめ用意していただきました。

 

本日の成果

松戸宿

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?diff=71820056&oldid=70326814

 
松戸神社

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?diff=71817927&oldid=71120258

 
矢切

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?diff=71817979&oldid=71211605

 
戸定邸

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?diff=71817740&oldid=69967769

 
それぞれこんな感じで、出典がついてめでたしなのですが。

成果の中に「松戸市」がないでしょ?

 


その理由は・・・

 2019-02-25T17:10:07  (「松戸市」を保護しました: 度重なる荒らし ([編集=自動承認された利用者のみ許可] (無期限) 


そうなのです。ここのところ「松戸市」の記事にいたずらが重なり、やむを得ず「半保護」の対処が取られているのです。しかもイベント3日前に!


半保護が記事にかかっていると、アカウントを持っていないユーザーや、アカウントを取りたてのユーザーは編集することができません。つまりこの対処をすることによって衝動的な荒らし行為を防ぐ効果が見込めるわけです。


・・・ってことは、今回のように「さあ、では出典をつけてみましょう」って思っても、アカウント取りたての人は編集ができないよーってことになります。


イベントで編集するんだから、その時だけ半保護を解除してもらえばいいんじゃないでしょうか?  という意見もあるかとは思いますが、ウィキペディアはイベントのために存在するわけではないので、そういった特例措置的なものはないほうがいいでしょう。


そんなわけで、編集対象の記事の動向には気をつけろ!の巻でございました。

ひなまつりWikipedia 女性×かながわ

桜木町の駅から徒歩圏内にある神奈川県立図書館は、紅葉坂の中腹にあります。
Kさん言うところの「一日に二度は登りたくない坂」で、昼休みに坂を下りて駅方面までランチに行くスタッフの体力に驚いているそう。

 

3月3日「ひなまつりWikipedia 女性×かながわ」と題された、神奈川県立図書館では初のウィキペディア編集イベントは、あいにくの雨。こういうイベントの場合、当日キャンセル/バックレがつきものですが、お足元の悪い中、遠方からの方も含め20数名が集まりました。

 

今回の特色ポイント。

  • 新規作成が5つ。5グループに分かれる。
  • 図書館のスタッフの方がそれぞれ各テーブルにつき、そのテーブルの執筆対象についてのレファレンスや館内資料案内を担当。
  • テーブルファシリテーターを任命し、新規記事作成手順をプリントアウトしておき、参加者の方は資料を調べ地の文を書いていくことに集中してもらい、ファシリテーターは記事のひな型や細々としたことを担当しつつファシリテートする。

作業手順を配布した狙いは、イベント終了時に5つの記事の”見た目”の違いがさほど出ないようにするため。


作成手順


【全員でディスカッション】
記事のタイトルを決める、構成を考える、各自の分担を決める

【全体にかかわる編集】
1︓定義⽂、⾒出し、出典欄に{{reflist}}、Infobox、{{工事中}}タグ(最優先)
2︓参考資料リストを作る
3︓カテゴリをつける、内部リンクをつける
4︓画像をアップロードして記事に呼び出す

【個人】
複数の資料から⽂章を作成し、各自の下書きページに書く

【参考テンプレート】
Template:Infobox 人物
Template:建築物

 

*******************************************************

 

5つの新規記事を作るという目標設定は、非常に高いものです。

 

今回のイベントでは、神奈川県立図書館の豊富な女性関連資料を活用していただくというテーマもあり、編集初心者が多数のウィキペディア編集イベントではよくある光景である「ブックトラックに今日使う資料を集めておく」ことをせず、午前中の私の講義と、武蔵大学の北村紗衣 准教授(さえぼーさん)の「ウィキペディアジェンダーバイアス」のお話(これだけでも今日のイベントは参加の価値が充分ありました)後、グループ分けし、テーブルごとのディスカッションを経て昼食を適宜取りながら、図書館内の資料を捜す、あるいはレファレンスを依頼するなどして、自分たちで図書館散策もかねて文献をそろえていく時間を取りました。

 

建物記事がふたつ、人物記事がみっつということで、隣接する「神奈川婦人会館」の外観撮影以外は外には出ません。その分だけ資料探しに時間が割けたというわけです。

 

さえぼーさんが合間合間で新聞検索サイトが使用可能なことや、記事に概要節は記事の分量が多くなってから作成する感じでよいので最初は要らないよというアドバイスなど繰り出しつつ、進行します。

 

図書館が用意したノートPCは台数は確保できていたのですが、有線LANのケーブルを各テーブルまで延ばしていくのに配線の取り回しを変更したり、ウィキペディア側からブロックされている、県の教育委員会の(公立学校にも割り当てられる)IPアドレスに運悪く当たってしまうと編集が不能なこと(PC側はWifiを否対応にしてある)など、ハード面でのイレギュラーがいくつかと、{{工事中}}のタグ+ノートページに「イベントで編集しているよ」という注意書きがあるにも拘らず、会場にいないウィキペディアンが(善意で)記事のメンテナンスや不備の修正をするケースがあり、書いていた文章が編集競合などの理由で運悪く消えてしまうアクシデントもありました。

 

熱気を持って作業を進めつつも和気あいあいのムードの中、予定された編集時間(2時間30分)はどんどんと過ぎていきます。

 

泣きの5分延長を経て、成果発表。

以下の5つの記事が作成されました。(*’-’)//”パチパチ☆

 

神奈川県立かながわ男女共同参画センター - Wikipedia

神奈川婦人会館 - Wikipedia

川喜多かしこ - Wikipedia

九重年支子 - Wikipedia

佐藤美子 - Wikipedia

 

私は、どこの文章を誰が書いたかを事細かにチェックはしていないのですが、地の文に関しては編集初心者の方がほとんど執筆しています。

 

また、当日はさえぼーさんによるデモ記事『マーガレット・キャヴェンディッシュ』が新規作成され、Tさんによる初の新規作成記事『日本初の女性一覧』が作成されました。

マーガレット・キャヴェンディッシュ - Wikipedia

英語版からの抄訳+加筆です。

日本初の女性一覧 - Wikipedia

着眼点もさることながら、信頼できる情報源がすべてついている一覧記事ってものすごく少ないので、今後の一覧記事の良いお手本になると思います。

 

さて、繰り返しになりますが、今回のイベントは「神奈川県立図書館の豊富な女性関連資料を活用していただく」というテーマがありますので、記事がどのように出来上がったかそのものよりも、そのプロセスを意識していただき、楽しんでいただきました。

 

女性関連資料についてはこちら

https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/guide/images/annex_w_2018.pdf

 

今回のイベントでは、記事作成対象選定をほぼすべてTさんにお任せしました。
条件的には、

  • まだウィキペディアに記事がない
  • 神奈川県立図書館に資料が豊富にある
  • 女性関連の題材

というもので、この条件に合う題材を400以上のリストから丹念にチェックして5つに絞り込んでくださいました。お疲れさまでした。ありがとうございました。

神奈川県立図書館のスタッフの皆様、ありがとうございました。単なる業務という感じでなく楽しんでいただけてたら私もうれしいです。

テーブルファシリテータ役を引き受けてくださったみなさん、お疲れさまでした。ありがとうございました。

イベントとしてのいわゆるウィキペディアタウン界隈

*『個別のイベントや関係者に対しての批判ではない』と前置きします。

ウィキペディアタウン(Wikipediaを編集するイベント)は今年も各地で行われてて、対外的に最も把握しやすいのは、開催情報が記されているページと、

プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン - Wikipedia

開催後のアーカイブです。

プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン/アーカイブ - Wikipedia

本日時点で今年は15回の開催を数えています。
今週で10週目ですから、今年も70回以上開催されるでしょう。

 

************

 

さて、Wikipediaの編集者の中には、Wikipedia編集イベントをあまりよく思っていない方もいらっしゃるようです。

『編集初心者がやってるからではなく、経験者がついてるなら、もっとしっかりやるべき』だとか『既存記事の加筆は歓迎しないぞ』のムードとか、あるいは『街の宣伝記事を増やすな』とか。
それぞれのWikipediaに対する愛情や想いがそういった声になる時もあるでしょう。

 

もし私がそのイベントに関わっていたら『これは執筆対象としてチョイスはしないだろう』と思う題材の記事も複数生まれていますし、中には記事として最低限ラインを満たしてなかったり、表示のエラーがあったりしても、イベント後に手を入れてもらえないままというケースもあります。

 

ウィキペディアタウンは、とにかく開催ありきで考えるものではなくて、先に目的があり、イベントをやると決め、その上でウィキペディアタウンが合致するかを考えないとダメ』
ウィキペディアタウンをやりたいという話を頂いたとき、(一緒にイベントした人はわかると思うのですが)私はイベント目的も含め細かい打ち合わせを重ねます。それは目的を理解し成果を上げるために、主催者側の視点で考えます。

 

他方、Wikipediaという場所を借りてのイベントなので、迷惑はかけたくないのです。全く迷惑をかけないのは難しいですから、極力、最小限になるように。

 

イベントで大事なのは参加者の方が感じるプロセスの部分。でも、Wikipediaには百科事典の項目として役立つものと言えるくらいまでは手を入れておかないと、イベントによる食べ散らかしになってしまいます。

 

先日行われたあるウィキペディアタウンでは、どうやらWikipediaに詳しい人がいなかったのではないか、ということが履歴から推測でき、それに気づいたウィキペディアンがおり、その方の発言から私も気づきました。

 

そのウィキペディアタウンで作成・編集された記事は、少なからずイベントとは関係のないウィキペディアンの手を煩わせています。
イベント参加者にウィキペディアの基本的な決まり事に対する理解が不足していると思わせる顕著な事例であり、ある記事は削除され、ある記事は大幅に手をいれなくてはならず…つまりは良い事例ではないです。

 

自分が関係していないウィキペディアタウンは、別にどうでもいい……わけではありません。私がどこかのイベントで編集された記事に手を入れているのを見たことがある人もいるでしょう。


自身がイベントに携わったかどうかは問わず、ウィキペディア編集イベントで知られているウィキペディアンの中でも、そういったフォローが必要だと思い積極的にやる人もいるし、やらない人もいるということです。

 

あくまで、ウィキペディアという所を借りてイベントは成立しているし、イベントをやるにしてもやりやすくありたい。主催者にも同様に、ウィキペディアってとこが衆目を集めるところであり、大きな幹があるからこその魅力であり、だからこそイベントとしてやりたいと思うのだ、ということを意識して欲しいと思ってます。

 

私は今、Facebookグループのウィキペディアタウンなどに所属せず活動していますが、たまに情報を求めて公開グループを見る場合があります。
そこには私が期待しているような活発な事例報告や研究、トラブル報告、成果報告などはありません。
どのイベントに誰が行ってどんな項目を編集したのかも、ひとめでわかるようにはなっていません。

 私のオフライン活動はできる限り公にしています。

利用者:海獺 - Wikipedia



もし仮にしっかりとアーカイブされるような形でイベント報告をしていこうという意識が共有されていない、あるいは重要視されていない、ということだとしたら、私からするととても不思議で、ウィキペディア編集はある意味アーカイブの手段のひとつだということを重要視していれば、イベントの記録も非常に重要なものだと思い至るはずなのに、と感じます。

 

性質によってはクローズなイベントの場合もあるので、すべてが公に記録されなければならない、とは思いませんけれど、自分達がやってる事をもっと俯瞰で見る人が増えるといいなと思って書いてみました。

誰も海獺のように取り組んではいないよ、という事ならそれはそれかなあとも思います。


ただ、私はけっこう真面目に取り組んでいるつもりです。

Wikipedia講座 初級編

福岡県福岡市城南区の「長尾コミュニティスポットわくわく」で行われた「Wikipedia講座 初級編」は無事に終わりました。

今回、私は福岡には行かず、自宅からZoomを使って「ウィキペディアとは何ぞや」という話と「編集の仕方」の話をしました。

まず城南区出身の「カンニング竹山」さんの記事の履歴を参照して、生年月日が1971年から2000年に書き換えられたイタズラ編集も、ウィキペディアでは記録が残るので過去版から閲覧できるんだよ、自分では消せないんだよというところから、ウィキペディアの編集システムの説明を始めました。

「カンニング竹山」の版間の差分 - Wikipedia

 

例題としては「福岡地方」という記事の定義文をZoomを通じて参照していただきながら、まずは私がリアルタイムで出典をつけてみました。
また、単に既存の文章に出典をつけるだけではなく、人口252万人という記述が古いデータだったことから、福岡県が公表しているデータをもとに数字を更新しつつ、出典をつけてみました。

「福岡地方」の版間の差分 - Wikipedia

 

ウィキペディアの編集イベントやそれに派生するイベントの目的や効果を説明のあと、それぞれ既存記事に出典をつけていくワークショップに突入。

約1時間後には参加した方全員が何らかの形で出典をつけ、記事の本文と出典の関係性、記述のシステム、履歴の残り方などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

 

毎回のように最近は説明しているのですが、ウィキペディアに反映していくことそのものが目的ではなくて、そのプロセスを通じて、いろいろなものが引っ付いてくることを意識したり、気づいたり、応用を考えたりという部分を共有していければと思います。

 

主催者、ファシリテーター、ご参加の皆さん、お歌の上手なMちゃん。お疲れさまでした🙂

【ウィキペディア】「記事名のつけ方」と「曖昧さ回避」と「ここが落ち着くんです」

 

 

f:id:RaccoWikipedia:20190214151929j:plain

ここが落ち着くんです

先日、沖縄県国頭郡(くにがみぐん)の恩納村(おんなそん)で、ウィキペディア編集イベントが行われました。

一般向けのイベントではなく、恩納村文化情報センターで職員の方の研修として行ったもので、編集体験を通してウィキペディアがどういうものなのかなどを知ってもらうものです。

成果として「仲泊遺跡」「万座毛」「山田城 (琉球国)」に加筆や出典の追加が行われ、全くの新規項目として「国頭方西海道」(くにがみほうせいかいどう)が作成されました。


実は、イベント開催前に新規記事作成候補には、今回作成対象にはならなかったものの恩納村に伝わる民謡の項目がありました。

今回はその項目(まだこの時点では記事はないですが)をサンプルとして、

  • 記事名のつけ方
  • リダイレクト
  • ふりがな

などについて、私なりの説明を書きたいと思います。

 

目次


谷茶前節

本題に入るまでが少し長いですがご容赦を。


谷茶前節という民謡をご存知でしょうか?

谷茶は恩納村の地名です。「たんちゃ」と読みます。

 

この地域の北西には砂浜が広がり、その浜は「谷茶前(たんちゃめー)」と呼ばれています。

漁村の漁の風景を踊りと共に琉球王に披露したという謂れを持つのが「谷茶前節(たんちゃめーぶし)」です。

www.youtube.com

この民謡の歌詞の碑が、谷茶前にあります。

「谷茶前の浜碑」という名前がつけられています。

www.jalan.net

 

記事名のつけ方(だからなんなんだという人はここから読んでください)

ウィキペディアにこの民謡「谷茶前節」の記事を作るとして、記事名はどうしましょう。

ウィキペディアガイドラインはこのページ。

Wikipedia:記事名の付け方 - Wikipedia

この文書の「正式名称」の解釈については論争の的になりがちです。「がいし」などでは実に一年をかけて議論が続き、「これが正式である」という根拠を示す、その根拠は希薄である、あるいはおかしいなどの論争に発展し、なかなか収拾がつかなくなることもあります。

ノート:がいし/過去ログ1 - Wikipedia

 

「谷茶前節」の記事を作るにあたっての、気を付けなければならないことがあります。

これは民謡の名前は歌碑にあるように「谷茶前節」であろうということ。つまり「谷茶の前の浜の民謡」という意味です。
しかし本来なら海岸を指す「谷茶前」という言葉でも、民謡を指す場合があるようなのです。


ハイサイおじさん」で著名な、喜納昌吉 & チャンプルーズの音源では「タンチャメー」あるいは「谷茶前」が楽曲の名前になっています。

https://www.amazon.co.jp/dp/B005C8QOJ6/ref=ap_ws_tlw_trk9

喜納昌吉&チャンプルーズOFFICIAL WEB » MUSIC

教育芸術社のサイトでも同様に「谷茶前」と表記されています。

https://www.kyogei.co.jp/shirabe/kyoudo/text47.html#02

またウィキペディアには「コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象」という記事があります。

コーラル・ブルー (吹奏楽曲) - Wikipedia

 

このように「節」がなくても民謡を指すことがあり、読者が「谷茶前」と検索する場合があるので、記事名は「谷茶前節」とした上で「谷茶前」をリダイレクト作成します。


この時

「何故 ”谷茶前” としているタイトルが多いのに、記事名を”谷茶前節”としたのか」

のような論争になる場合もありますが

「現地の歌碑がそうであるから」

乃木坂46生田絵梨花さんが”谷茶前節”としているから」

【乃木坂46】可愛すぎる生田絵梨花の沖縄民謡「谷茶前節」 - YouTube

などの理由を考えておいてもいいかもしれません。

 

曖昧さ回避

お寺や神社はウィキペディアの編集イベントの題材として適しています。

資料がある程度残っていることが多く、文化財があったり、お祭りがあったり、などの理由からです。

 

ただ、同名の寺社はとても多いです。

2015年10月に 第3回ウィキペディア街道「大山道」(海老名)で 海老名市にある総持院という寺院の記事を作成することになりました。

総持院 (海老名市) - Wikipedia

記事名を決める際に

「総持院という名前の寺院は海老名市にしかないのだろうか」

を調べました。グーグルの検索とグーグルマップ、それとウィキペディア内検索を行い、全国にある総持院を調べ、曖昧さ回避のページを作成しました。

総持院 - Wikipedia

その上で「総持院 (海老名市)」という記事名と決めて、これでウィキペディアでは一意となり落ち着くわけです。

 

2017年の尾道市立大学でのウィキペディアタウンでは尾道市にある「艮神社」(うしとらじんじゃ)の記事を作成しました。

艮神社 (尾道市長江) - Wikipedia

当初、「艮神社」で記事を作成したのですが、調べてみると尾道市内だけでも御調町と山波町にあり、(尾道市長江)までを記事名に含めて一意の記事名としています。

その後同じ広島県内の福山市にも艮神社があり、本来ならば曖昧さ回避のページを作成しておいてもよかったのですが、他の「艮神社」を作成する際に作られる場合もあります。

記事名を一意にするために「曖昧さ回避」について検討しなければならないことがある、ということだけ覚えておいてください。

Wikipedia:曖昧さ回避 - Wikipedia

 

 

 

リダイレクト

”リダイレクトとはある記事へリンクしたときに、別のページに転送する機能のことです。また、そのようなページをリダイレクトページ(転送ページ)と呼びます” 

Wikipedia:リダイレクト - Wikipedia

ウィキペディアでは定義されています。

これを作っておくことによって「荒井由実」と検索しても「松任谷由実」の記事に自動で飛ぶようになります。

https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E8%8D%92%E4%BA%95%E7%94%B1%E5%AE%9F&redirect=no



松任谷由実への記事には

ユーミン

荒井由美」(実と美の誤字)

呉田軽穂」(松田聖子への提供曲である「赤いスイートピー」などでの別名義)

などなどいろいろなリダイレクトがあります。

「松任谷由実」へリンクしているページ - Wikipedia

 

言わずもがなですが、リダイレクトの乱立と、一意でないリダイレクトの作成は厳禁です。

 

表記ゆれとふりがな

ウィキペディアは記事対象の正式名称を定義づけるという役目を担うのではなく、読者が調べ物をしたいときに、煩わしくなく目当ての項目にたどり着くようにということを考えなくてはいけません。

いろいろなことを踏まえると「谷茶前節」の記事の定義文は、こんな風になるのではないかと思います。

谷茶前節(たんちゃめーぶし・たんちゃめぶし)は、沖縄県国頭郡恩納村の海岸「谷茶前(たんちゃめ)」での漁を題材とした沖縄民謡である[1]。

単に「谷茶前」と表記されていても、民謡を指す場合がある[2]。この項では民謡及び海岸をついて記す。



このように表記しておけば、読者が混乱することはないと思います。

「谷茶前」でリダイレクトページを作成するのを忘れずに。

 

NPOVに配慮

NPOVとは「Neutral Point Of View」のことで、ウィキペディアで「WP:NPOV」と検索すると、

Wikipedia:中立的な観点 - Wikipedia

に転送されます。

記事名で留意すべき「中立的な観点」とは何でしょうか?

竹島 (島根県) - Wikipedia

독도 - 위키백과, 우리 모두의 백과사전

Liancourt Rocks - Wikipedia

これら言語版が異なる三つの記事は、同じものについての事です。

厳密にいえば、同じ記事名になるのが好ましいのですが、各言語版でそれぞれの異なる記事名を検索しても、ちゃんとたどり着く状態になっています。

 

ケーススタディ

東京電機大学ウィキペディアタウンでは「千住郵便局電話事務室」という記事を新規作成しました。

千住郵便局電話事務室 - Wikipedia

昭和4年に竣工したこの建物は現存しており、2019年(平成31年)現在は「NTT千住ビル」という名称の建物です。

昭和7年から平成14年までは「足立郵便局電話分室」という名称でした。つまりこの名称でいた時期が一番長いのです。

電話局の建物が、ウィキペディアの単独項目として成立するのはなぜかというと、

Wikipedia:独立記事作成の目安 - Wikipedia

この建物が日本武道館京都タワー永代橋、聖橋などを設計した山田守の数少ない現存する建築であるということが挙げられます。

 

この建物の記事名をどうするか、ということをイベントの最中にお話ししました。
私の考えが正しいかどうかは別としてお話したのは、

「この建物の特筆性は山田守が千住郵便局電話事務室の設計をしたことによるものなので、NTT千住ビルという記事名とするのは、現在POVではないだろうか」

もちろん、現状使われている名前で「NTT千住ビル」という記事名でもいいとは思いますが、名称が変わるたびに記事名の変更をしていくのもどうなのかなぁと思った次第です。

 

 

 

 

 

【ウィキペディア】記事どうしをつなぐコツと内部リンクをビジュアルエディターでぺたぺた

              f:id:RaccoWikipedia:20190212092927j:plain

ウィキペディアには内部リンクと呼ばれる、ウィキペディア内の記事どうしをつなぐためのシステムがあります。通常単語が青い字で表示され、クリック/タップすることで、びゅーんとその記事に飛べるというものです。

このシステムがあるからこそ、ウィキペディアではわからない単語が出てきてもその場で解決することができ、そっちに行っちゃいけないよという声も聞こえないまま「あれ? アタシはなんで台所に来たんだっけ?」状態のように、当初何を調べていたかもわからなくなるほどいろいろな記事を読みふけってしまうというアリジゴクでもあります。

 

今回は記事同士をつなぐにあたってのチェックポイントと、ビジュアルエディターを使った内部リンク付加についてのお話。


記事同士をつなぐにあたってのチェックポイント


まずはこのページを見て解説します。

国頭方西海道 - Wikipedia

 

f:id:RaccoWikipedia:20190212093558j:plain

赤い矢印のところに「リンク元」とあります。これは「この記事がどこからリンクされているか」を調べることができます。

「国頭方西海道」へリンクしているページ - Wikipedia

以下のページが、国頭方西海道 にリンクしています:

(前の50件 | 次の50件) (20 | 50 | 100 | 250 | 500 件) を表示
Portal:歴史 (← リンク | 編集)
Portal:歴史/新着項目 (← リンク | 編集)
Portal:道路 (← リンク | 編集)
Portal:道路/新着項目 (← リンク | 編集)
九州・沖縄の史跡一覧 (← リンク | 編集)
歴史国道 (← リンク | 編集)
仲泊遺跡 (← リンク | 編集)
利用者:佐藤莞嬴/テスト1 (← リンク | 編集)
(前の50件 | 次の50件) (20 | 50 | 100 | 250 | 500 件) を表示

こんな風に表示されます。
つまり他の記事から、この記事へたどり着くリンクは

九州・沖縄の史跡一覧
歴史国道  
仲泊遺跡  

の3つということになります。
むやみやたらと増やしてもいいものではありませんが、他の記事で言及されていると当該記事にたどり着きやすくなる=読んでもらえる機会が増える=読者の知識が増える という図式にはなります。

逆側から考えると、これを増やしていこうという考え方が、関連記事の作成や充実の足掛かりにもなります。

このリンク元に何もない状態ならば、ウィキペディア内の検索ならば直接記事に行かなくても検索結果からたどり着くことができるかもしれませんが、検索サイトからウィキペディアの記事に来ていただくには一字一句違いがない状態の検索語でないと、たどり着けなくなる可能性が高くなります。

ざっくりとした考え方としては以上です。
ちゃんと知っておきたいという方は

Wikipedia:記事どうしをつなぐ - Wikipedia

を参照してください。


ビジュアルエディターを使った内部リンク付加

ワークショップなどでは「ソースを編集」を使用することが多いと思います。

理由はいろいろありますが、「ソースの編集」のほうが機能的に広く、書き方と反映のされ方の仕組みが理解できやすく、記事の中身を見ることで、他の記事のスタイルを真似てみたいときなども役に立つなどの利点からです。


ここではあえて、だいたい記事ができたなーのあとにビジュアルエディターを使って内部リンクをつけてみましょうというお話を書いておきます。

またまたこの記事

国頭方西海道 - Wikipedia

これを書いている現在、内部リンクがほとんどないのです。
つまり、この記事から他の記事に飛んでいける機会が少ない。

f:id:RaccoWikipedia:20190212095939j:plain

ここをクリック。

f:id:RaccoWikipedia:20190212100111j:plain

赤枠のところが出現しました。

 

この状態で、一行目の「琉球王国」を文字列を選んでから、上のほうの「∞」のような鎖のマークをクリック。

f:id:RaccoWikipedia:20190212100545j:plain

 

 

するとこんな風に、リンクの候補が出ます。

f:id:RaccoWikipedia:20190212100806j:plain

 

適切な記事を選んで「完了」を押す。たったこれだけで内部リンクができました。

以降も、そのまま次々と内部リンクを付加したい場所を選んで、鎖マークをクリックして、を繰り返します。

終わったら、右上の「変更を公開」を押し、念を押されるので「ソースを編集」での「プレビューを表示」と同じ役割の「変更内容を確認」を押して、再度間違いないかチェック。

問題なければ投稿。という流れです。

 

本日はここまで。

 

【ウィキペディア】出典と注釈と脚注と関連書籍と参考文献と部屋干しとTシャツと私

f:id:RaccoWikipedia:20190206010340j:plain

部屋干しとTシャツと私


【まずは基本】

Wikipediaの編集には出典を伴うことがルールで決められています。『検証可能性を満たせ』ということです。

Wikipedia:検証可能性 - Wikipedia

Wikipedia:出典を明記する - Wikipedia

 

つまり、ある項目に

『〇〇は✕✕である』

と書いたら、その典拠となる情報ソースを付加しろということです。

すると

『〇〇は✕✕である[1]

のような表示になり、文章と情報源が紐付けられ、読者がより深く知りたい時の手掛かりとしても機能します。

 

【出典と注釈と脚注】

Wikipediaで言う出典と注釈と脚注とは、私なりに噛み砕いて説明すると……

 

出典:情報源。典拠。

注釈:内容に関する注意書き。注釈に対する出典が記される場合がある。

脚注:出典や注釈がまとめてあるところ。多くは欄外。

 

となります。

これがごっちゃになっている記事はたくさんあるので、違いを意識して、見出しも書式も分けてもらえたらなと。

 

もうひとつ気をつけたいのは、注釈に独自研究を書いてしまう場合です。

      ^ 1 ただし〇〇については、✖✖とする説もある。

などの注釈がついてる場合があり、読んだ人にとっては根拠があるのかないのかすらわからない状態になります。ですから注釈にも出典をつける方が好ましいでしょう。

 

【関連書籍と参考文献】

このふたつも統一されずに使われています。

こちらについてもWikipediaではこんな風に考えてねというポイントを私なりに書きます。

 

関連書籍(Related books):その項目をより深く知るにあたって、助けになるような資料だが、項目執筆には使用してないもの。発展資料(Further reading)を指す場合も。

参考文献(References):その項目を執筆するにあたって使用した資料。

 

ざっくりこんな感じなのですが、ここでも気をつけなければいけないのが『その項目を執筆・加筆していないのに、この本も役に立つよ、とばかりに関連書籍リストに加えていくのは、Wikipediaにおける振る舞いとしてはあまり良くないこと』ということ。

 

どうしてかと言うと、自分の関係する本を滑り込ませる人がいるからなんです。もっといえば中立的な観点かどうか推し量りにくいし、独自研究が入り込みやすい。

追記:
関連書籍のリストに入れたくなるほどの資料ならば、その資料を使って少しでも加筆しましょう。

 

これは『外部リンク欄』にも言えることで『ここを見るともっとわかるよ』というリンクを本来張るはずが、自分の執筆する観光ガイドへのリンクを観光地の項目に張りまくっていた人もいました。

こういうのはまあ、その、かっこ悪いし良くないことです。

 

ケーススタディ

 ここで、出典と注釈と脚注と関連書籍と参考文献についての例として、ウィキペディア日本語版でとても評価の高い記事である「地方病 (日本住血吸虫症)」を見てみましょう。内容を読むのではなく、見出しに注目します。

地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipedia  2019-02-05T07:49:10の版より

8 脚注

  8.1 注釈
  8.2 引用
  8.3 出典

9 参考文献

「脚注」セクションの下に「注釈」「引用」「出典」のセクションが分かれて整理されています。

さらにその下のセクションは「参考文献」があり「関連書籍」のセクションはありません。 

この記事の「出典」と「参考文献」の関係を見てみましょう。
"以下5点の文献を主に用いた。"
とある通り、主となる5つの文献があり、複数の著者による文献は、収録された個別のタイトルも付記してあります。

参考文献のトップには
小林照幸、1998年7月20日発行、『死の貝』、文藝春秋 ISBN 4-16-354220-5
と記されており、この本からの出典は、

    127 ^ 小林(1998) pp.9-17
    128 ^ 小林(1998) pp.105

という風に整理されて書いてあります。

これらのソースを見てみると、当該箇所は単に
<ref>小林 (1998) pp.9-17</ref>
<ref>小林 (1998) p.105</ref>
と書かれています。

これらは

Template:Sfn - Wikipedia  を使用して
{{Sfn|小林|1998|p=9-17}}
{{Sfn|小林|1998|p=105}}
のような書き方も可能です。

これらの方式はいずれも同一文献のいろいろなページを多数出典として使用する場合、とても便利です。
参考文献に書誌情報をしっかり書いておき、出典には略した形で記すという考え方です。

同一文献を多用する場合は、
<ref␣name="名前">書誌情報</ref>
も使用できますが、ページの指定ができないことから、この書き方はWeb出典などのほうが有効です。


【編集イベントでは・・・】
さて、どうしてこんなことを長々と書いているかと言いますと、ウィキペディア編集イベントにおいて、新規記事を作成するときセクションごとに担当を分ける場合があります。その時、この文献はきっとよく使うだろうという資料については、事前にミーティングボードに
「【小林照幸、1998年7月20日発行、『死の貝』、文藝春秋 ISBN 4-16-354220-5】は、【小林1998】で統一します。この本からの出典は、{{Sfn|小林|1998|p=〇〇}}って入れてください。<ref>とかは必要ありません」
とでも書いておけば、書誌情報の表記ゆれも、長い呪文を生成することも、出典欄の取っ散らかりも未然に防ぐことができます。

ですので、新規記事を作成するとき「出典」と「参考文献」の欄をあらかじめ作ってしまい、あとは紐づけていくだけ、というやり方もあるということです。

追記:Wikipediaには、ものすごくたくさんの出典、参考文献に関するテンプレートが用意されています。

Wikipedia:出典テンプレート - Wikipedia
Category:出典テンプレート - Wikipedia

これらは「こうなっていると便利だよね」という善意が生み出しているものなのですが、数の多さや複雑さに面食らってしまう場合もあります。

幸いにしてWikipediaは、編集画面を開けばどういう風に記述されているか何となくわかるようになっているので「この記事のこのやり方を参考にしたい」と思ったら(間違ってへんな編集をしちゃわないように)そーっとのぞいてみてごらん、でいくらでも真似ができます。

ただし、出典のつけ方にも機能強化などの理由から流行り廃りがあるので、なるべく最近できた記事を参考にするといいでしょう。

アカウントを持っていれば、自分の利用者ページに「下書き」のページがあります。
参考になりやすい体裁や呪文を、一旦「下書き」にコピペしてきて、いろいろ試してみるのも良いと思います。

コピペをする際はどのページから持ってきたということを必ず要約欄に書いてくださいね。

f:id:RaccoWikipedia:20190206010754j:plain

わかったような、わからないような。